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『 同僚 07 』≪≪    ≫≫『 同僚 05 』   
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 その人が入り口から入ってきたとたん、事務所内の空気は一変した。
 トレンチコートの下は何故かタンクトップ。
 細身で長髪、パッと見では性別がよくわからない。
 ただ、ひどく華奢な首筋が艶かしい。
「あの……」
 話しかけてはみたものの、何と続けていいか迷ってしまった。
 言葉では言い表せないような、とても妙な雰囲気の持ち主なのだ。
「部屋を探しているのだが」
 赤い唇が動いて、艶々とした黒髪が揺れる。
 声で男性だと判別できた。けれどその口調は、容姿からはとても想像のつかない堅苦しい言い回しだ。
「この近くがいい」
「あ、はい、個人のお客様ですと、ご紹介者様のお名前を頂いているのですが……」
「……はて、なんといったか……。本人とは違って随分まっとうな名前だったはずなんだが……」
「はあ」
「確か……タチバナ・ヨシアキ?」
「……かしこまりました。あの、お客様のお名前をお伺いしても宜しいですか?」
「高坂といえばわかる」
「少々お待ちください」
 奥で打ち合わせ中だった橘さんにその名を告げると、
「ええっ!」
 みるみる血相を変えた橘さんは、受付まで走って行ってその人を無理やり廊下へと連れ出した。
 気になってしまって聞き耳を立てていると、こんな会話が聞こえてくる。
「だから東京での住まいを探しにだな───
「そんなことしてやる訳がないだろうっ!わかっているくせに何故来るんだ……」
「決まっている。面白いからだ」
「ただでさえこの間の件で、武田には皆ピリピリしているというのにっ」
「ああ、アレか。アレは安田が首を突っ込んでくるから悪い」
「………頼むから帰ってくれ」
「ふふ、では家で待っているぞ」
「待たんでいいッ!!」
 やがて戻ってきた橘さんはひどく疲れた顔で、席に座るなり大きくため息を吐いた。
 その顔を見ながら、
(ミステリアス……)
 ますます橘さんがどんな人なのか、わからなくなってしまった。
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