前触れなしに扉が開いて、その男性は入ってきた。
長髪にスーツ。その容貌は整っていて、いやに若い。
(………ホスト?)
としか思えないが、あの流行りの"盛り髪"はしていない。
「どーも」
男性はポケットから細い淵の眼鏡を取り出して、かけた。
するとどこかインテリな雰囲気が漂い始める。
こんにちは、と笑顔で返しながら、、
「御用でしたらお伺いいたしますが」
と言うと、
「いい物件ない?」
男性は親しげな口調で喋りかけてきた。
「お住まいをお探しですか?ええと、どなたかご紹介者様がいらっしゃいま──」
「新しい部屋はいいからさ、おねーさんの家に一緒に住みたいな」
「えっ?」
「家賃、払わなくてもいいウラワザ、知ってるんだよね」
からかわれているのかな、と思って対応に困っていると、
「よさないか」
背後から救いの声がかかった。
以前にも見たような、ものすごく渋い顔の橘さんだ。
「きれいなおねーさんはべらかして仕事してる、って景虎に言ってやろうっと」
「……すみません、気にしないでください」
男性を無視しつつ私にそう謝ると、
「隣、空いてますよね」
応接室となっている隣室へと男性を促した。
「で、首尾は?」
「どうもこうもねーって。二度と嫌だぜ、こんな仕事」
「難しかったか」
「むずかしーなんてもんじゃねーぜ?死ぬかと思ったって。冗談じゃなく。たぶん武田が絡んでる」
「本当か?」
ここで扉が閉まってしまって、会話は聞けなくなってしまったけれど。
(仕事?)
橘さんはもしかして、副業に夜の店でも経営しているのだろうか。
(だって"カゲトラ"って源氏名っぽい)
この間の美女も、そっちの関係の人だったりして。
あり得ないとはわかっていても、なんだか想像が膨らんでしまってしょうがなかった。
長髪にスーツ。その容貌は整っていて、いやに若い。
(………ホスト?)
としか思えないが、あの流行りの"盛り髪"はしていない。
「どーも」
男性はポケットから細い淵の眼鏡を取り出して、かけた。
するとどこかインテリな雰囲気が漂い始める。
こんにちは、と笑顔で返しながら、、
「御用でしたらお伺いいたしますが」
と言うと、
「いい物件ない?」
男性は親しげな口調で喋りかけてきた。
「お住まいをお探しですか?ええと、どなたかご紹介者様がいらっしゃいま──」
「新しい部屋はいいからさ、おねーさんの家に一緒に住みたいな」
「えっ?」
「家賃、払わなくてもいいウラワザ、知ってるんだよね」
からかわれているのかな、と思って対応に困っていると、
「よさないか」
背後から救いの声がかかった。
以前にも見たような、ものすごく渋い顔の橘さんだ。
「きれいなおねーさんはべらかして仕事してる、って景虎に言ってやろうっと」
「……すみません、気にしないでください」
男性を無視しつつ私にそう謝ると、
「隣、空いてますよね」
応接室となっている隣室へと男性を促した。
「で、首尾は?」
「どうもこうもねーって。二度と嫌だぜ、こんな仕事」
「難しかったか」
「むずかしーなんてもんじゃねーぜ?死ぬかと思ったって。冗談じゃなく。たぶん武田が絡んでる」
「本当か?」
ここで扉が閉まってしまって、会話は聞けなくなってしまったけれど。
(仕事?)
橘さんはもしかして、副業に夜の店でも経営しているのだろうか。
(だって"カゲトラ"って源氏名っぽい)
この間の美女も、そっちの関係の人だったりして。
あり得ないとはわかっていても、なんだか想像が膨らんでしまってしょうがなかった。
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