「一緒には帰れないんですか」
「うん、まだ授業があるから」
「残念だな」
自分より遥かに背の高い男三人に囲まれて、美弥は嬉しそうにしている。
その笑顔を見られただけでも、よかったなと千秋は思った。
不肖の兄を持って苦労しているはずの美弥が、小さな身体でニコニコしている姿を見ると、千秋はどうしても構ってやりたくなってしまう。
「ほら、美弥。次の授業、始まるから」
「うん。今日は本当にありがとうございました」
美弥は千秋と直江に向かって、頭を下げた。
「いいえ、気になさらないでください」
「そうそう。じゃ、お勉強、がんばって」
促されるようにして、美弥は友達の輪の中に戻っていく。
三人が教室を出ようとすると、背後からこんな声が聞こえてきた。
「ねえ、だれだれ?」
「眼鏡のひと、めちゃくちゃいけてんじゃん!」
その声に、うんうん、と千秋は頷いた。もちろん心の中で。
「スーツの人は?いくつくらい?」
その友達の問いには美弥が、
「直江さんはダメだよー。お兄ちゃんのものだもん」
臆面もなく、そう答えた。
「美弥っ!」
慌てて振り返る高耶に、
「よくわかってんじゃん」
千秋はそう声をかける。
「笑ってねーで、お前も何とか言えよっ!」
高耶が赤い顔で直江を責めると、
「私はあなたのものですよ、高耶さん」
直江は苦笑いでそう言った。
教室の女子たちの間から、何故か歓声が上がる。
「直江──っ!!」
「さあ、行きましょう」
高耶は、直江に引きずられるようにして歩きだす。
そんなふたりを見ながら、
「勝手にやってくれ……」
千秋はうんざり顔を作った。
「うん、まだ授業があるから」
「残念だな」
自分より遥かに背の高い男三人に囲まれて、美弥は嬉しそうにしている。
その笑顔を見られただけでも、よかったなと千秋は思った。
不肖の兄を持って苦労しているはずの美弥が、小さな身体でニコニコしている姿を見ると、千秋はどうしても構ってやりたくなってしまう。
「ほら、美弥。次の授業、始まるから」
「うん。今日は本当にありがとうございました」
美弥は千秋と直江に向かって、頭を下げた。
「いいえ、気になさらないでください」
「そうそう。じゃ、お勉強、がんばって」
促されるようにして、美弥は友達の輪の中に戻っていく。
三人が教室を出ようとすると、背後からこんな声が聞こえてきた。
「ねえ、だれだれ?」
「眼鏡のひと、めちゃくちゃいけてんじゃん!」
その声に、うんうん、と千秋は頷いた。もちろん心の中で。
「スーツの人は?いくつくらい?」
その友達の問いには美弥が、
「直江さんはダメだよー。お兄ちゃんのものだもん」
臆面もなく、そう答えた。
「美弥っ!」
慌てて振り返る高耶に、
「よくわかってんじゃん」
千秋はそう声をかける。
「笑ってねーで、お前も何とか言えよっ!」
高耶が赤い顔で直江を責めると、
「私はあなたのものですよ、高耶さん」
直江は苦笑いでそう言った。
教室の女子たちの間から、何故か歓声が上がる。
「直江──っ!!」
「さあ、行きましょう」
高耶は、直江に引きずられるようにして歩きだす。
そんなふたりを見ながら、
「勝手にやってくれ……」
千秋はうんざり顔を作った。
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