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『 問答 01 』≪≪    ≫≫『 父兄参観 03 』   
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 自分と同じか、それより下の人間だけでいい。
 例えば北海道、最北端からひとつずつ、小学校、中学校、高校をまわって歩く。一年以内に沖縄、最南端まで網羅するペースで続ければ、必ず途中で見つけることができるだろう。───中学を卒業して、もう社会へ出てしまっているかもしれない?……考えられなくはないが……それよりも自分のように、精神状態が安定せず、学校に通えていない可能性のほうが高いように思う。"あの状態"で最期を迎えた彼の魂。深々とついた傷は、そう簡単に癒しきれるものではなかっただろう。───何らかの理由で、まだ小学校へ上がる年齢でない可能性。それは大いにある。託児施設全てを捜索範囲に入れるとなると、とても一年では回りきれない。───もし自分と同じタイミングで換生しているとすれば、来年度には高校を卒業してしまう計算になる。そうなるともう、捜索範囲を絞ることはむずかしい。だらこそ、それまでに何とかして彼を見つけ出さなければならないのに……。大体こんなことはもう色部が何年もかかってやっていることなのだ。彼はいつの時代も日本中を旅して回っていた。だから地方ごとの事情にも敏い。今更自分が考えたところで、更にそれを実行に移したところで、色部以上のことが出来るはずもないのだ。……ならば何故、こんなことを考えている?
「なあ」
「何だ」
 奥村の、眼鏡の瞳が不審そうにこちらを見ている。
「何だ、じゃない。聞いてなかったのか」
 直江の前の席の椅子を借りて座っている奥村は、不満げな顔で言った。
「……悪い」
「ったく。だからな……」
 奥村が再び話を始めようとすると、ちょうど始業のベルが教室内に鳴り響いた。
「……しかたない。後で話す」
 自分の席へ戻っていく奥村を眼で追いながら、直江は再び思考を戻しかけて……やめることにした。あまりにも、不毛すぎる。
 彼のことを考えている間は、焦りばかりが心に残る。
 彼のことを頭から追いやれば、不安で胸がいっぱいになる。
 ならばどうすればいいのだろうか。
 直江は暗い眼になって、黒板を睨みつけた。
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