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『 父兄参観 03 』≪≪    ≫≫『 父兄参観 01 』   
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「おにいちゃん!」
 教室に入るなり、美弥が駆け寄って来た。
「ほんとに来てくれたんだ!」
「約束したろ」
「うん!」
 始業前の教室を見渡すと、やはり最後だからという理由でか、座席の後ろの方には結構な人数の父兄たちが集まっている。
「学校は?さぼって怒られない?」
「ちゃんと、許可貰ってあるからな」
 もちろんそんなものは貰っていなかったが、高耶がいなくたって教師たちは騒ぎもせず、通常通りの授業を行うだろう。
「ほら、席に着け」
「うん」
 美弥が席に戻ると、高耶は教室の隅の方に立った。
 まわりは落ち着いた年齢の大人たちばかりだ。ひとりだけ高校の制服を着た高耶が、正直居心地が悪いな、と感じ始めたその時、教室の扉が開いた。
「よっ」
「お前っ……!」
 入って来たのは、千秋修平だった。
「何しに来たんだよ」
「ほら、"従兄弟"としては、な」
 いったいどこで聞きつけたのかと呆れていると、美弥が千秋に気付いて声をあげる。
「千秋さん!」
「美弥ちゃ~ん」
 千秋が手を振ると、美弥も恥ずかしそうに振り返した。
 そろそろ始業の時間だ。
 高耶は、どうしても扉の方を見て確認してしまう。
(やっぱ……来ないか……)
「なんだ?」
 気付いた千秋が声をかけてきた。
「いや、ちょっと……」
 高耶が言い淀んでいると……、
  ガララララ
 扉が、開かれた。
 長身で、いつものダークスーツ姿で、どうしても人目を引く容姿を持ったお馴染の男が、そこには立っている。
「直江!」
「げ、来やがった」
「すみません、遅くなりました」
 直江はいつもの微笑みで、高耶にそう謝った。
「いや……」
 高耶は感謝の気持ちを伝えたいと思うのだが、なかなか言葉に出来ない。結局、
「もう、始まるぜ」
 それだけ言うと、高耶は前へ向き直った。
 馬鹿なことを言ってしまった……。でも直江なら、きっと自分の気持ちに気付いてくれるはず。ちらりと横に立つ直江を見ると、まるで高耶の心を読んだかのように、無言で頷き返してきた。高耶は慌てて視線を戻す。
 視線の先の美弥も直江が来たことに気付いたらしく声をかけようとするが、始業のチャイムに阻まれてそれは出来なかった。
 けれど、本当に嬉しそうな顔でこちらに笑いかけてきた。
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