「ここへ来るように言われたんだが」
やって来たのは、黒い服を着た長身の男だった。
「おう、おまんが橘か」
「……そうだが」
真っ白の作業服の周りを囲むが、身長差があるせいかあまり威圧感は与えることが出来ない。
「あんた、その服が汚れたらどうするつもり?」
「……は?」
「捨てるつもりじゃろう」
「何が言いた───」
「そがいにわしらが信用出来んがか!?」
「現代人のハイテク洗濯術は、わしらには真似できんと思うちょるがか!?」
あまりの剣幕に口を挟むことの出来ない橘は、見かねて驚くべき行動にでた。
「何しちょる!?」
何と上着を脱ぎ始めたのだ。
「洗いたいのなら洗えばいい。乾くまでここで待っている」
「───おんし……」
誰もがその露出狂じみた行動ではなく、露わになった橘の上半身に言葉を失っていた。
様々な傷が刻まれた中で、一際左胸の傷が目立っている。
橘はそれを隠すかのように腕組みをすると、大きな木製のアイロン台に寄りかかった。
「……じゃあ、やる?」
「おう、橘はそこで待っちょれ」
橘はおもむろに動き出す面々を見守るように、ゆったりと佇んでいる。
やがて落ち着いた頃になって、橘は訳を話し始めた。
確かに服を捨てたことはあるけれど、それは毒に汚染されてしまったからで、きっと洗っても駄目だっただろうという判断からのことだそうだ。
「毒……。そんなものを使ってくる敵がいるのかあ」
「おんしも大変じゃのう」
「……まあな」
少しだけ洗濯室内が和やかなムードになったところで、思わぬ来客があった。
「何やってる」
自分の洗濯物を持ってきた、仰木隊長だ。
彼は自分の毒のことを配慮して、汚れた衣服を共同のランドリーボックスには入れないようにしている。
「隊長」
橘がアイロン台に寄りかかるのをやめて、姿勢を正した。
「おまえ……服は?」
「今洗濯を」
「じゃあ、何か別のを着ろよ」
「あいにく着替えは持ってません」
「安心しろ!もうすぐ乾燥機から上がってくるきの!」
せっせと働く隊士たちを一瞥した高耶は、彼らに背を向けて何か小声で話し出した。
「……あんま人に見せんなよ」
「何故です。見られて困るようなものはありません。これが私です」
「いや、それはよくわかってんだけどな……」
いいから言うこと聞けよ、と言いながら、高耶は手近にあった毛布を橘に手渡した。
やって来たのは、黒い服を着た長身の男だった。
「おう、おまんが橘か」
「……そうだが」
真っ白の作業服の周りを囲むが、身長差があるせいかあまり威圧感は与えることが出来ない。
「あんた、その服が汚れたらどうするつもり?」
「……は?」
「捨てるつもりじゃろう」
「何が言いた───」
「そがいにわしらが信用出来んがか!?」
「現代人のハイテク洗濯術は、わしらには真似できんと思うちょるがか!?」
あまりの剣幕に口を挟むことの出来ない橘は、見かねて驚くべき行動にでた。
「何しちょる!?」
何と上着を脱ぎ始めたのだ。
「洗いたいのなら洗えばいい。乾くまでここで待っている」
「───おんし……」
誰もがその露出狂じみた行動ではなく、露わになった橘の上半身に言葉を失っていた。
様々な傷が刻まれた中で、一際左胸の傷が目立っている。
橘はそれを隠すかのように腕組みをすると、大きな木製のアイロン台に寄りかかった。
「……じゃあ、やる?」
「おう、橘はそこで待っちょれ」
橘はおもむろに動き出す面々を見守るように、ゆったりと佇んでいる。
やがて落ち着いた頃になって、橘は訳を話し始めた。
確かに服を捨てたことはあるけれど、それは毒に汚染されてしまったからで、きっと洗っても駄目だっただろうという判断からのことだそうだ。
「毒……。そんなものを使ってくる敵がいるのかあ」
「おんしも大変じゃのう」
「……まあな」
少しだけ洗濯室内が和やかなムードになったところで、思わぬ来客があった。
「何やってる」
自分の洗濯物を持ってきた、仰木隊長だ。
彼は自分の毒のことを配慮して、汚れた衣服を共同のランドリーボックスには入れないようにしている。
「隊長」
橘がアイロン台に寄りかかるのをやめて、姿勢を正した。
「おまえ……服は?」
「今洗濯を」
「じゃあ、何か別のを着ろよ」
「あいにく着替えは持ってません」
「安心しろ!もうすぐ乾燥機から上がってくるきの!」
せっせと働く隊士たちを一瞥した高耶は、彼らに背を向けて何か小声で話し出した。
「……あんま人に見せんなよ」
「何故です。見られて困るようなものはありません。これが私です」
「いや、それはよくわかってんだけどな……」
いいから言うこと聞けよ、と言いながら、高耶は手近にあった毛布を橘に手渡した。
PR
月別 一覧