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 "遠すぎる"と照弘に言ったのは物質的な距離のことではない。
 どうして自分はいつもこうなってしまうのだろう。
 近づきたいと思えば思うほど、彼は遠くなる。
 離れたいと思えば思うほど、縛られる。
 彼との適度な距離がいつも保てない。
(わかってる)
 彼にこだわりすぎるからいけないんだ。
 彼のことばかりみてるから、彼との距離ばかり、必死に測っているから。
 違うものを見ていればいい。
 そうすれば、それなりの距離を保っていられるはずだ。
 何故それができないのか。
 どうしていつも、彼のことばかり考えてしまうのか。
「義明」
──はい?」
「電話だ。仰木さんて人から」
 どきりとした。
「どうした」
「……いえ。わかりました」
 照弘からコードレスの受話器を受け取って、考えを巡らせた。
 何か報告するように言われてただろうか?
 そんな覚えはない。
 家まで掛けてくるなんて、よほどの緊急事態だろうか。
 直江は自室へと入って、通話ボタンを押した。
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