朝から空はどんよりと曇っていて、じっとりとした空気が肌にまとわりつくようだった。
お盆の名残でまだまだ忙しい実家の手伝いに駆り出されていた直江は、少し休憩を取ろうと人目を避けてあまり人の来ない二階の角の部屋へとやって来た。
窓際に腰を下ろし、馴染の煙草に火を点ける。
顔を上げると、遠くの空に雷鳴が光るのが見えた。
(降りだしたら厄介だな)
雨の中、足袋や法衣の裾を濡らして歩くのはあまり気持ちのいいものではない。
けれど方角からいってあの雲がこちらへ移動してくるのは目に見えていた。
苦々しく思って煙を吐き出していると、またひとつ、雷鳴が光る
(来るのならさっさと来てしまえばいい)
なんだか腹立たしくなってきた。
いずれ来るとわかっているものを待つ身にもなって欲しい。
どの程度の規模なのか。雷の音は?雨の量は?すぐに去ってしまうのか、長い間留まり続けるのか。……来なければ解らないことを延々と想像し続けるのはあまりにもつらい。
どこかの誰かが、記憶を取り戻すタイミングは?自分を責め始めるタイミングは?一体どんな言葉で責めてくるのだろうか。自分はそのとき、どう答えればいいのだろうか……。
どうせ雷が落ちるのなら、自分の真上に落ちて欲しい。
そして、過去と現在の罪ごと、この身を焼いて欲しかった。
感情を、欲望を、この想いを、粉々に砕いて欲しかった。
お盆の名残でまだまだ忙しい実家の手伝いに駆り出されていた直江は、少し休憩を取ろうと人目を避けてあまり人の来ない二階の角の部屋へとやって来た。
窓際に腰を下ろし、馴染の煙草に火を点ける。
顔を上げると、遠くの空に雷鳴が光るのが見えた。
(降りだしたら厄介だな)
雨の中、足袋や法衣の裾を濡らして歩くのはあまり気持ちのいいものではない。
けれど方角からいってあの雲がこちらへ移動してくるのは目に見えていた。
苦々しく思って煙を吐き出していると、またひとつ、雷鳴が光る
(来るのならさっさと来てしまえばいい)
なんだか腹立たしくなってきた。
いずれ来るとわかっているものを待つ身にもなって欲しい。
どの程度の規模なのか。雷の音は?雨の量は?すぐに去ってしまうのか、長い間留まり続けるのか。……来なければ解らないことを延々と想像し続けるのはあまりにもつらい。
どこかの誰かが、記憶を取り戻すタイミングは?自分を責め始めるタイミングは?一体どんな言葉で責めてくるのだろうか。自分はそのとき、どう答えればいいのだろうか……。
どうせ雷が落ちるのなら、自分の真上に落ちて欲しい。
そして、過去と現在の罪ごと、この身を焼いて欲しかった。
感情を、欲望を、この想いを、粉々に砕いて欲しかった。
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