「わたしはながいあいだ、己の度量と欲望にめをつむり、とうてい手のとどかないばしょへ必死に手をのばしていた」
そうすることでしか生きては来れなかったし、今となっては抵抗こそが自分の証明の手段でもある。
「そうしてあがいていたせいで、おおきな過ちを犯してしまった」
そして今も、家族をひどく傷つけている。
「抵抗をやめるべきですか。己をすてるべきですか」
「捨てられるのか」
「……いいえ」
直江は首を横に振った。
「わたしは彼ではない。己以上にだいじなものなんてないんです」
「彼とは?」
「……ある人をさがしています」
膝の上の拳が震える。
「いずれ話せるときがくるかもしれません」
直江は答えながら、知らず知らずのうちに涙を流していた。
そうすることでしか生きては来れなかったし、今となっては抵抗こそが自分の証明の手段でもある。
「そうしてあがいていたせいで、おおきな過ちを犯してしまった」
そして今も、家族をひどく傷つけている。
「抵抗をやめるべきですか。己をすてるべきですか」
「捨てられるのか」
「……いいえ」
直江は首を横に振った。
「わたしは彼ではない。己以上にだいじなものなんてないんです」
「彼とは?」
「……ある人をさがしています」
膝の上の拳が震える。
「いずれ話せるときがくるかもしれません」
直江は答えながら、知らず知らずのうちに涙を流していた。
PR
月別 一覧