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『 夕立 01 』≪≪    ≫≫『 問答 05 』   
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「わたしはながいあいだ、己の度量と欲望にめをつむり、とうてい手のとどかないばしょへ必死に手をのばしていた」
 そうすることでしか生きては来れなかったし、今となっては抵抗こそが自分の証明の手段でもある。
「そうしてあがいていたせいで、おおきな過ちを犯してしまった」
 そして今も、家族をひどく傷つけている。
「抵抗をやめるべきですか。己をすてるべきですか」
「捨てられるのか」
「……いいえ」
 直江は首を横に振った。
「わたしは彼ではない。己以上にだいじなものなんてないんです」
「彼とは?」
「……ある人をさがしています」
 膝の上の拳が震える。
「いずれ話せるときがくるかもしれません」
 直江は答えながら、知らず知らずのうちに涙を流していた。
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