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『 もうひとりのよっくん 01 』≪≪    ≫≫『 バリカン 』   
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 松本の自宅で夕飯の準備をしていると、長秀から電話が入った。
『かげとらっ、テレビつけろっ!今すぐっ!』
 リモコンを手に取りながらチャンネルはどこかと聞こうとしたが、すぐに必要がないとわかった。
 どの局も緊急生放送になっている。
 赤字のテロップは"斯波英士緊急記者会見"。
『晴家に電話するから、直江に知らせてやってくれ』
 と言っているうちに直江からキャッチホンで着信が入る。
『景虎様!いま───
「ああ、みてる」
 いったい何を発表するつもりなのだろうか。
 やはり音楽活動に専念などというのはあくまでも噂で、何かの計画の下準備だったのだろうか。
 テレビ画面には会場入りした信長の表情がアップで映り、いっせいにフラッシュがたかれている。
 しばらく経っても会場が静まることはなく、仕方なく進行を始めた司会の女性はすぐに信長へ
発言権を委ねた。
「本日は、急な呼びかけにも関わらず、お集まり頂きありがとうございます」
 信長の浪々とした声は相変わらずで、高耶も握った拳に力が入る。
 短い挨拶の後、話はいよいよ本題へと入った。
「この度、───監督の次回作に出演が決まりました」
 おおお、と会場にどよめきが走る。
 それは、日本でもかなり名の知れた、米国出身の大物映画監督の名前だった。
 映画の内容や、出演の経緯など次々に質問がとんで、信長がそれにひとつずつ答える中、画面の
テロップのほうは早々と"斯波英士、ハリウッド進出"に変わっている。
「ハリウッド……か……」
 高耶がため息とともにそう漏らすと、
『人騒がせな……』
 電話の向こうの直江も呟く。
   ……ええ、しばらくはLAの方に活動拠点を移すつもりで……
 会見はしばらく終わりそうにない。
 とりあえず、《闇戦国》関連ではなくて安心したものの、とうとう日本からもいなくなってしまう
信長に、一抹の寂しさを感じなくも無い高耶だった。
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