部屋を出ようと卯太郎の背中を押しながら、どうしてもDVDの音が耳に入ってくる。
甘ったれた声を出す女優と卑猥な言葉を発する男優とのやりとりが、自分のどうしようもない痴態を思い出させるから、なんだかいたたまれなくなってきた。
とそこへ、
「隊長」
引き戸がガラッと開いて、黒のミリタリーウェアを着込んだ男がやってきた。
「う、うわあっ!」
「かくせっ!」
またしても潮らは慌て出し、楢崎などは身を挺して画面を隠したりしている。
「………なんだ、橘か」
「早く閉めろって!」
高耶の時と同じようなやり取りがされ、直江が言われた通りに引き戸を閉めると、みたび鑑賞会は再開された。
男所帯なのだから誰かに見つかったからといって咎められるものでもなさそうだが、やはりこういうものは隠れてみたほうが雰囲気が出るのだろうか。
突っ立ったまま流れ始めたビデオに視線が釘付けになっていた直江は、少ししてから不審気に高耶をみた。
「あなたまでこんな……」
「ちがう、オレは」
「しっ!ちょっとだまって!!」
高耶の言葉を制して誰のものかもわからない声が飛ぶ。
平隊士が天下の仰木高耶に黙れと言えてしまうほど、AVのチカラというのはすごいらしい。
高耶はため息をついて、まだ血が止まらないでいる卯太郎の腕を掴んだ。
「ちょっと中川んとこ連れていってくる」
「私も行きます。話があったんです」
貧血でふらつきはじめた卯太郎は直江がおぶってやって、医務室へ向かうことにした。
「あんなもの観て。欲求不満だったんですか」
「馬鹿いうな」
「言ってくれればよかったのに」
「……………」
違うと言っているのに直江もしつこい。
「………卯太郎がいるんだぞ」
そう言って直江の背中を見ると、卯太郎は苦しそうに呻いていて、ふたりの会話などまるで聞こえていないようだった。
甘ったれた声を出す女優と卑猥な言葉を発する男優とのやりとりが、自分のどうしようもない痴態を思い出させるから、なんだかいたたまれなくなってきた。
とそこへ、
「隊長」
引き戸がガラッと開いて、黒のミリタリーウェアを着込んだ男がやってきた。
「う、うわあっ!」
「かくせっ!」
またしても潮らは慌て出し、楢崎などは身を挺して画面を隠したりしている。
「………なんだ、橘か」
「早く閉めろって!」
高耶の時と同じようなやり取りがされ、直江が言われた通りに引き戸を閉めると、みたび鑑賞会は再開された。
男所帯なのだから誰かに見つかったからといって咎められるものでもなさそうだが、やはりこういうものは隠れてみたほうが雰囲気が出るのだろうか。
突っ立ったまま流れ始めたビデオに視線が釘付けになっていた直江は、少ししてから不審気に高耶をみた。
「あなたまでこんな……」
「ちがう、オレは」
「しっ!ちょっとだまって!!」
高耶の言葉を制して誰のものかもわからない声が飛ぶ。
平隊士が天下の仰木高耶に黙れと言えてしまうほど、AVのチカラというのはすごいらしい。
高耶はため息をついて、まだ血が止まらないでいる卯太郎の腕を掴んだ。
「ちょっと中川んとこ連れていってくる」
「私も行きます。話があったんです」
貧血でふらつきはじめた卯太郎は直江がおぶってやって、医務室へ向かうことにした。
「あんなもの観て。欲求不満だったんですか」
「馬鹿いうな」
「言ってくれればよかったのに」
「……………」
違うと言っているのに直江もしつこい。
「………卯太郎がいるんだぞ」
そう言って直江の背中を見ると、卯太郎は苦しそうに呻いていて、ふたりの会話などまるで聞こえていないようだった。
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