街中で、急に駆け出した義明は、少し前を歩いていた男の腕を強引に掴んで振り返らせた。
「なんだよ」
振り返ったその男が、怪訝な顔で義明をみる。
「………すみません。人違いでした」
義明が小さく謝ると、その男はさっさと歩いて行ってしまう。
取り残された義明は、そのままその場で立ち尽くした。
「どうした」
「いえ」
照弘が声をかければ一応微笑んでは見せるものの、とても笑顔と呼べる顔ではない。
「行きましょう」
そういって歩き出した弟の背中からは、絶望にも似た悲しみが滲み出ている。
弟の"病"はまだ癒えていないのだな、と照弘は再認識せずにはいられなかった。
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