今回伊達方に仕掛けたかなり大規模な作戦は、かなり厳しいといわれていた
当初の予測どおり、とてもシビアなものとなった。
かろうじて勝利できただけでも大収穫だ。
けれども数の少ない医療班の面々にとっては、戦闘終了後こそが本番と言えた。
先程から中川は、会議室を急ごしらえの医務室として、横たわる隊士たちの間を、
忙しそうに走り回っている。
「すみません、おまたせしちゃって」
「いや」
大量の怪我人が出た際は、幹部陣といえども傷の具合によっては後回しにされる。
軽傷だったため、先に事後処理を済ませてきたらしい兵頭、高耶、橘の三人は
その並び順のままやっと手当てを受けることとなった。
「うわっ、コレはひどすぎです」
兵頭のぱっくりとあいた傷口の消毒にてこずっていると、
手当てを待つふたりの様子が自然と目に入ってきた。
何かに気付いたようすの高耶が傍らの橘に耳打ちしたりして、
笑いあっている。
そのうち、橘が高耶の手の甲に視線をとめた。
切り傷ができているのに気付いたようだ。
橘は、その傷口に滲んだ血を吸い取るようにして口付けた。
「!!!」
その様子があまりにも自然で、高耶も別段騒いだりしなかったから、
周囲の人間は誰も気付かなかったようだが。
「どうした」
ひとり赤面する中川に、兵頭が怪訝そうに声をかけてきた。
当初の予測どおり、とてもシビアなものとなった。
かろうじて勝利できただけでも大収穫だ。
けれども数の少ない医療班の面々にとっては、戦闘終了後こそが本番と言えた。
先程から中川は、会議室を急ごしらえの医務室として、横たわる隊士たちの間を、
忙しそうに走り回っている。
「すみません、おまたせしちゃって」
「いや」
大量の怪我人が出た際は、幹部陣といえども傷の具合によっては後回しにされる。
軽傷だったため、先に事後処理を済ませてきたらしい兵頭、高耶、橘の三人は
その並び順のままやっと手当てを受けることとなった。
「うわっ、コレはひどすぎです」
兵頭のぱっくりとあいた傷口の消毒にてこずっていると、
手当てを待つふたりの様子が自然と目に入ってきた。
何かに気付いたようすの高耶が傍らの橘に耳打ちしたりして、
笑いあっている。
そのうち、橘が高耶の手の甲に視線をとめた。
切り傷ができているのに気付いたようだ。
橘は、その傷口に滲んだ血を吸い取るようにして口付けた。
「!!!」
その様子があまりにも自然で、高耶も別段騒いだりしなかったから、
周囲の人間は誰も気付かなかったようだが。
「どうした」
ひとり赤面する中川に、兵頭が怪訝そうに声をかけてきた。
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「景虎様……」
そう呼びかけると、すっかり陶酔しきっていた高耶は一瞬我に帰ったような顔をして首を振った。
情事の時にはあまり呼ばれることのない名に、違和感を覚えたようだ。
「その名前で呼ぶな───ッンンッ!」
構わずに更に腰をたたきつけると、悲鳴を上げながら睨みつけてくる。
虎の瞳。
「……そんな眼でみても駄目。余計に燃えるだけですよ」
直江が眼を細めると、高耶は侮蔑の笑みを浮かべた。
「ヘンタイ」
「……あなたもね、景虎様」
「ッ──……!」
その後直江がその名を呼ぶ度に、高耶の悲鳴は一段と高くなった。
そう呼びかけると、すっかり陶酔しきっていた高耶は一瞬我に帰ったような顔をして首を振った。
情事の時にはあまり呼ばれることのない名に、違和感を覚えたようだ。
「その名前で呼ぶな───ッンンッ!」
構わずに更に腰をたたきつけると、悲鳴を上げながら睨みつけてくる。
虎の瞳。
「……そんな眼でみても駄目。余計に燃えるだけですよ」
直江が眼を細めると、高耶は侮蔑の笑みを浮かべた。
「ヘンタイ」
「……あなたもね、景虎様」
「ッ──……!」
その後直江がその名を呼ぶ度に、高耶の悲鳴は一段と高くなった。
『ア、ア、ア、ア』
高耶の声がだんたん高くなってきて、終わりが近いことが直江にはわかる。
少し顔を近づけただけで、高耶の方から直江の唇に吸い付いてきた。
『ンッ──……、ンンンッ、ンンッ』
妖しく揺れだす高耶の腰を押しとどめて、性器の根元をキツく掴む。
『ック……!』
『まだ駄目』
直江の意地悪を、高耶は苦悶の声と愉悦の表情で受け入れる───………
「橘!!」
「……はい?」
目の前の場面が一瞬にして会議室へと変わった。
たった今、イきかけていたはずの人物が、壇上から怒りの視線を投げつけてくる。
「何ぼやっとしてる!聞いてるのか!?」
「いえ、聞いていませんでした……」
「ったく、何考えてんだ!」
怒鳴り散らしても高耶の怒りは収まらない。
直江が他の隊士たちを見ると、下を向いたまま黙りこくっている。
これでは意見が揃わずに滞っていた会議が、ますます萎縮するだけだ。
だから、釘を刺すつもりで言った。
「何を考えていたか、話して聞かせましょうか?」
その言葉を聞いて、高耶は何と思ったのだろう。
「……………いい」
やっぱり怒り気味に言って、ダレきった会議室を見渡した。
もう三時間は軍議が続いている。
「少し、休憩にする」
大げさなため息とともに告げると会議室が安堵の吐息に包まれたから、
10分だけだぞ!、と高耶は念を押した。
そして。
「橘、ちょっと来い」
怒りの表情で、直江に別室に来るように言う。
直江は高耶に返事をしながら、いまこの状態の自分を呼び出して、10分後またここに
戻れるつもりでいるのかと、高耶の自分に対する認識の甘さを改めて痛感した。
高耶の声がだんたん高くなってきて、終わりが近いことが直江にはわかる。
少し顔を近づけただけで、高耶の方から直江の唇に吸い付いてきた。
『ンッ──……、ンンンッ、ンンッ』
妖しく揺れだす高耶の腰を押しとどめて、性器の根元をキツく掴む。
『ック……!』
『まだ駄目』
直江の意地悪を、高耶は苦悶の声と愉悦の表情で受け入れる───………
「橘!!」
「……はい?」
目の前の場面が一瞬にして会議室へと変わった。
たった今、イきかけていたはずの人物が、壇上から怒りの視線を投げつけてくる。
「何ぼやっとしてる!聞いてるのか!?」
「いえ、聞いていませんでした……」
「ったく、何考えてんだ!」
怒鳴り散らしても高耶の怒りは収まらない。
直江が他の隊士たちを見ると、下を向いたまま黙りこくっている。
これでは意見が揃わずに滞っていた会議が、ますます萎縮するだけだ。
だから、釘を刺すつもりで言った。
「何を考えていたか、話して聞かせましょうか?」
その言葉を聞いて、高耶は何と思ったのだろう。
「……………いい」
やっぱり怒り気味に言って、ダレきった会議室を見渡した。
もう三時間は軍議が続いている。
「少し、休憩にする」
大げさなため息とともに告げると会議室が安堵の吐息に包まれたから、
10分だけだぞ!、と高耶は念を押した。
そして。
「橘、ちょっと来い」
怒りの表情で、直江に別室に来るように言う。
直江は高耶に返事をしながら、いまこの状態の自分を呼び出して、10分後またここに
戻れるつもりでいるのかと、高耶の自分に対する認識の甘さを改めて痛感した。
これから数時間は、相手方に動きはないと踏んで、高耶は隊士たちに交代での休憩を取るように伝達した。
最初の休憩組に組み込まれた直江は、渡された弁当を手に煙草を吸っていた。
正直、あまりおいしそうには見えないな、と思っていると、背後からささやき声がする。
『直江』
普段は絶対"橘"としか呼ばない高耶だ。
何事かと思って振り返ると、弁当をぐいと差し出してくる。
中華風の弁当には白米でなくチャーハンが入っていたのだが、その脇に詰め込まれた食紅の赤。
高耶の嫌いな紅しょうがだ。
直江は一応あたりに気を配りながら、誰にも見られないようにそれを自分の弁当に移した。
「残せばいいでしょうに」
「卯太郎に笑われるんだよ」
高耶はそう言うと、まるで何事も無かった風を取り繕って去っていった。
最初の休憩組に組み込まれた直江は、渡された弁当を手に煙草を吸っていた。
正直、あまりおいしそうには見えないな、と思っていると、背後からささやき声がする。
『直江』
普段は絶対"橘"としか呼ばない高耶だ。
何事かと思って振り返ると、弁当をぐいと差し出してくる。
中華風の弁当には白米でなくチャーハンが入っていたのだが、その脇に詰め込まれた食紅の赤。
高耶の嫌いな紅しょうがだ。
直江は一応あたりに気を配りながら、誰にも見られないようにそれを自分の弁当に移した。
「残せばいいでしょうに」
「卯太郎に笑われるんだよ」
高耶はそう言うと、まるで何事も無かった風を取り繕って去っていった。
目を覚ますと高耶の片腕が自分の胸の上に乗っていた。
足もなんだか絡まっている。
何かを抱くようにしていると、安心して眠れるらしい。
起こさないように苦労して抜け出すと、
今度は寝返りついでに掛けていた毛布をまるめてかかえこんだ。
直江はなんだかそれが妙におもしろく思えて、
口元を緩めながら身支度を整えた。
足もなんだか絡まっている。
何かを抱くようにしていると、安心して眠れるらしい。
起こさないように苦労して抜け出すと、
今度は寝返りついでに掛けていた毛布をまるめてかかえこんだ。
直江はなんだかそれが妙におもしろく思えて、
口元を緩めながら身支度を整えた。
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