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 待って!待ってってばっ!いかないで……っ!!いや!!かげと───

「晴家!」
 直江に揺すられて、綾子はハッと目を覚ました。
 顔中が涙と汗でびっしょりだ。
「大丈夫か」
 助手席の綾子に、直江は問いかけた。
 走っていたはずの車は路肩に停められている。
「………大丈夫じゃない」
 厭な夢だった。
 景虎が、自分たちを捨ててどこかへ行ってしまう夢。
 いや、現状だけをみれば、この夢もあながち間違っていないのかもしれない。
 頼りにならない自分たちに見切りをつけた景虎は、二度と戻らないつもりでいるのかもしれない。
 それとも、もう絶対に戻ってこれない世界へ、ひとり旅立ってしまったのかもしれない。
 再び涙を滲ませる綾子を見て察した直江が、手を伸ばして背中を抱いてくれる。
「大丈夫だ」
「………直江」
「あのひとには、必ずまた会える」
 まるで自分に言い聞かせるように言ってゆっくりと背中をさするその手は、励ましてくれているようでもあり、すがりつくようでもあった。
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