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『  』≪≪    ≫≫『 お見舞い 』   
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 カップルを装ってとある公園のベンチで張り込み中の直江と綾子だったが、
あまりにも対象に動きがない為、綾子はすっかり怠慢モードに突入していた。

「ねー、寒いしもう帰りましょーよー」
「何を言ってる。日付が変わるまでは粘ると言っておいただろう」
「ええ!?あと1時間以上あるじゃない!?……じゃあ、ちょっとコンビニで雑誌でも調達してくる」
 立ち上がりかけた綾子の腕を掴んで、直江は引き止めた。
「例の護符の《気》はお前でなきゃ探れないんだ。この隙に動きがあったらどうする」
「えー、じゃああんたが買ってきて。私ここで見張ってるから」
「………しょうがないな」
 なんだかんだいって直江という男は甘い。
 昔はこんなに優しくなかったと思うのだが。
 二人だけの夜叉衆になって早数年。
 今や頼れるのは互いだけだという仲間意識があるからだろうか。
 それとも。
(やっぱどんな男も美女には弱いってことかしら)
 ふふふ、とひとりで笑いを漏らす綾子の元へ、じきに直江は戻ってきた。
 手にした雑誌をはい、と手渡してくる。
「………ちょっとぉ。何よ、『パチスロ万歳』って」
「好きなんだろう?」
「そうだけど、もっとファッション誌とか情報誌とか女性向けのおしゃれなやつがあるでしょ!」
「女性?誰のことだ」
「目の前にいるでしょ!今世紀最大の美女がっ!」
「冗談はよしてくれ」
「……………」
 ああ、直江には自分が"美女"どころか"女"であるという認識すらないのだな、と思い知らされた瞬間だった。
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