※「endless richness」年明けのその後
年に一度だけの紋付羽織に袴姿の直江は、時計を眺めてため息をついた。
時間が経つのが遅い。
明日には高耶に会える。が、これでは高耶に会う前に待ちくたびれて死んでしまいそうだ。
苛立ちのせいか煙草が吸いたくてしょうがなくなった。
母親には、衣服に匂いがつくからと止められている。
だから自室に隠れて吸っていると、
「義明、澤村さんがお見えだぞ」
同じく紋付袴姿の照弘が、檀家への挨拶のために直江を呼びに来た。
「今行きます」
吸殻を灰皿へと押し付けて、直江は立ち上がる。
ニヤつく照弘は、直江の隠れ煙草の理由などとうにお見通しとでも言いたげだ。
「明日、もう東京に戻るんだってな」
「ええ、まあ」
「で、いつ紹介してくれるんだ」
「……何の話です?」
「お前がいま会いたくてしょうがないひとの話、だよ」
「───兄さん」
直江は立ち止まって言う。
「そんな話、お母さんには絶対にしないでくださいよ」
「わかってる、わかってる」
照弘の二度返事ほど、あてにならないものはない。
直江は不安気に息を吐いた。
年に一度だけの紋付羽織に袴姿の直江は、時計を眺めてため息をついた。
時間が経つのが遅い。
明日には高耶に会える。が、これでは高耶に会う前に待ちくたびれて死んでしまいそうだ。
苛立ちのせいか煙草が吸いたくてしょうがなくなった。
母親には、衣服に匂いがつくからと止められている。
だから自室に隠れて吸っていると、
「義明、澤村さんがお見えだぞ」
同じく紋付袴姿の照弘が、檀家への挨拶のために直江を呼びに来た。
「今行きます」
吸殻を灰皿へと押し付けて、直江は立ち上がる。
ニヤつく照弘は、直江の隠れ煙草の理由などとうにお見通しとでも言いたげだ。
「明日、もう東京に戻るんだってな」
「ええ、まあ」
「で、いつ紹介してくれるんだ」
「……何の話です?」
「お前がいま会いたくてしょうがないひとの話、だよ」
「───兄さん」
直江は立ち止まって言う。
「そんな話、お母さんには絶対にしないでくださいよ」
「わかってる、わかってる」
照弘の二度返事ほど、あてにならないものはない。
直江は不安気に息を吐いた。
PR
『 正月気分 』≪≪ ≫≫『 「1月度web拍手お礼Text」の続き 』
月別 一覧