「義明、義明」
玄関のチャイムが鳴り、応対に出た母親がばたばたと戻ってきた。
「あなた宛てですよ、受け取っていらっしゃい」
「?わかりました」
玄関へと向かった義明は、華やかなラッピングのされた大小さまざまな箱を
両手いっぱいに持って戻ってきた。
そういえば明日はバレンタインデーだ。
「チョコレートか?」
去年、高校にあがって初めてのバレンタインで、義明は自分が同じ年の頃の量を
軽く超えるプレゼントを持ち帰った。
「誰からだ」
「………知らない方ばかりですね」
照弘も一緒になって差出人をチェックする。
「学校の子か?ならなんで学校で渡さないんだ」
義明が首をかしげながら言う。
「去年、義理以外のものは全てお断りしたせいでしょうか」
それで、今年は突っ返されないために、家に送りつけてきたという訳か。
「………お前、あの量でもまだ断った分があったのか」
まあ、俺らの頃より景気がいいから、バレンタインも盛大なんだろう、
と自分を納得させて、某有名メーカーのチョコレートを手に取る。
「お、これうまそうだな」
「駄目ですよ。今年は義理でも受け取らないことにします」
返せるものは返します、と義明は照弘の手からチョコレートを取り上げる。
「いいじゃないか、貰っておけば」
「変に期待させる訳にもいかないでしょう」
「………お前は」
もう17にもなるのに、義明にはまだ特定の人がいないようだ。
これだけヨリドリミドリの中で、いったい何を考えてるんだか。
「いいんだぞ、別に。女の子のひとりやふたりと付き合ったって」
「"ふたり"はまずいでしょう。兄さんじゃないんですから」
義明が笑うから、脇腹に軽くパンチを入れる。
しばらくそこで、くすぐったりしてじゃれ合っていたが、ふと義明は真顔になった。
「お付き合いなんてしても、きっと苦労させるだけですから」
「………そりゃあ、そうかもしれないけどな」
義明の心の内を理解してやれる子は、確かに同年代にはいないだろう。
けれど、義明が思春期の男の子であることには変わりはないのだ。
精神的なこと以上に、肉体的なこともあるはずだ。
「その………女の子に興味がない訳じゃないんだろう?だったら我慢しないほうがいい」
それを聞いて弟は、ああ、と当たり前のような顔で言った。
「そういうことは、別にお付き合いをしていなくたって、出来るでしょう?」
「……………よしあき?」
照弘が、もしかしたら教育の仕方を間違ったかもしれない、と思った瞬間だった。
玄関のチャイムが鳴り、応対に出た母親がばたばたと戻ってきた。
「あなた宛てですよ、受け取っていらっしゃい」
「?わかりました」
玄関へと向かった義明は、華やかなラッピングのされた大小さまざまな箱を
両手いっぱいに持って戻ってきた。
そういえば明日はバレンタインデーだ。
「チョコレートか?」
去年、高校にあがって初めてのバレンタインで、義明は自分が同じ年の頃の量を
軽く超えるプレゼントを持ち帰った。
「誰からだ」
「………知らない方ばかりですね」
照弘も一緒になって差出人をチェックする。
「学校の子か?ならなんで学校で渡さないんだ」
義明が首をかしげながら言う。
「去年、義理以外のものは全てお断りしたせいでしょうか」
それで、今年は突っ返されないために、家に送りつけてきたという訳か。
「………お前、あの量でもまだ断った分があったのか」
まあ、俺らの頃より景気がいいから、バレンタインも盛大なんだろう、
と自分を納得させて、某有名メーカーのチョコレートを手に取る。
「お、これうまそうだな」
「駄目ですよ。今年は義理でも受け取らないことにします」
返せるものは返します、と義明は照弘の手からチョコレートを取り上げる。
「いいじゃないか、貰っておけば」
「変に期待させる訳にもいかないでしょう」
「………お前は」
もう17にもなるのに、義明にはまだ特定の人がいないようだ。
これだけヨリドリミドリの中で、いったい何を考えてるんだか。
「いいんだぞ、別に。女の子のひとりやふたりと付き合ったって」
「"ふたり"はまずいでしょう。兄さんじゃないんですから」
義明が笑うから、脇腹に軽くパンチを入れる。
しばらくそこで、くすぐったりしてじゃれ合っていたが、ふと義明は真顔になった。
「お付き合いなんてしても、きっと苦労させるだけですから」
「………そりゃあ、そうかもしれないけどな」
義明の心の内を理解してやれる子は、確かに同年代にはいないだろう。
けれど、義明が思春期の男の子であることには変わりはないのだ。
精神的なこと以上に、肉体的なこともあるはずだ。
「その………女の子に興味がない訳じゃないんだろう?だったら我慢しないほうがいい」
それを聞いて弟は、ああ、と当たり前のような顔で言った。
「そういうことは、別にお付き合いをしていなくたって、出来るでしょう?」
「……………よしあき?」
照弘が、もしかしたら教育の仕方を間違ったかもしれない、と思った瞬間だった。
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