「就職なんてできるわけねーだろ」
千秋は眼鏡の奥から呆れた視線を送って寄こした。
「何で」
「まともなとこで働いちまったら、調伏旅行なんて出来なくなるだろうが」
確かに、言われてみればそうだ。
「ねーさんは卒業したらどうするつもりなんだ?」
「親には就職したって暗示かけて、家でんだろ」
「ふうん……」
「お前も家は出ろよ」
「……無理だ。美弥をひとりにはできない」
「親父さんがいんだろーが。不規則な生活につき合わせるほうが、カワイそうだぜ?」
「……………」
千秋にしてはまともな意見だったから、高耶は黙るしかなかった。
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