「まさか、ほんとにその恰好でくるとはね」
残った直江の元へ、綾子がやってくる。
さすがに上着は脱いでいたが、直江は今日もスーツだった。
千秋が言ったのだそうだ。
ポリシーなんだろ、だったら脱ぐんじゃねーと
「まあ、見慣れすぎて違和感ないけどねえ」
そう言いながら、綾子はちらりと直江の左手を見る。
「それ、外したって誰も気にしないわよ」
シャツの腕を捲った直江は、腕時計をつけたままだ。
直江も同じようにちらりと自分の左手首を見たあとで、
「していたって誰も気にしないだろう」
「まあ、ね」
綾子は首をすくめてそう答えた。
PR