高耶たちを乗せた車両が、目的の駅の構内へゆっくりと滑り込んでいく。
と、まだ全ての車両がホームへ収まりきらないうちに、電車は不自然に停車した。
「?」
思わずふたりは顔を見合わせる。
しばらくそのままドアは開かず、ホーム上を慌てふためいた駅員達が行き来するのが見えた。
しばらくすると、車内アナウンスが人身事故の発生を告げる。
乗客はホームにつけることのできた前の方の車両から、順番に降りることになった。
「……飛び込み、だよな」
「でしょうね」
ふたりが車両から出てホームに降り立つと、先頭車両の周辺に人だかりが出来ていた。
遠くから、救急車のサイレンが聞こえてくる。
野次馬の輪から這い出てきた高耶と同じ年の頃の男の子が、待っていた友人に話す声が聞こえた。
「まだ生きてるみたいだぜ」
「げえ、それも悲惨だな」
スピードが落ちたところだったせいか、うまく下敷きにならずにまだ息があるらしい。
───しかし。
「おい……」
高耶にも、見えてえてしまったようだ。
ホームの人だかりを少し離れた場所から呆然と眺めているひとつの霊体。
まだ、若い。大学生くらいだろうか。
「直江」
「ええ」
もちろん、直江にも見えている。
「馬鹿なことしやがって」
そう言うと、高耶はその男の元へと歩き出した。
「高耶さん」
呼びとめる直江の声など、全く耳に入っていないようだ。
と、まだ全ての車両がホームへ収まりきらないうちに、電車は不自然に停車した。
「?」
思わずふたりは顔を見合わせる。
しばらくそのままドアは開かず、ホーム上を慌てふためいた駅員達が行き来するのが見えた。
しばらくすると、車内アナウンスが人身事故の発生を告げる。
乗客はホームにつけることのできた前の方の車両から、順番に降りることになった。
「……飛び込み、だよな」
「でしょうね」
ふたりが車両から出てホームに降り立つと、先頭車両の周辺に人だかりが出来ていた。
遠くから、救急車のサイレンが聞こえてくる。
野次馬の輪から這い出てきた高耶と同じ年の頃の男の子が、待っていた友人に話す声が聞こえた。
「まだ生きてるみたいだぜ」
「げえ、それも悲惨だな」
スピードが落ちたところだったせいか、うまく下敷きにならずにまだ息があるらしい。
───しかし。
「おい……」
高耶にも、見えてえてしまったようだ。
ホームの人だかりを少し離れた場所から呆然と眺めているひとつの霊体。
まだ、若い。大学生くらいだろうか。
「直江」
「ええ」
もちろん、直江にも見えている。
「馬鹿なことしやがって」
そう言うと、高耶はその男の元へと歩き出した。
「高耶さん」
呼びとめる直江の声など、全く耳に入っていないようだ。
PR
月別 一覧