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『 人違い 』≪≪    ≫≫『 洗濯班 おまけのおまけ 』   
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 宿毛の男どもが揃って町へ行くという。
「おなごじゃ、おなご」
 関係あるかは解らないが、現在白鮫の女性たちが数人、宿毛砦へと泊まり込んでいる。
 小源太との打ち合わせやらなにやらが理由だが、もしかしたらその色香に我慢がきかなくなったのかもしれない。
 男たちが車で出て行くのを、直江が冷めた目で見送っていると、
「あんたはいかないのかい」
 寧波がめずらしく、直江に声をかけてきた。
 しょっちゅう顔は合わせているが、あまり口をきくことはない。
 きっと直江の正体が不明だから、警戒されているのだろうと思っていたが、意外にも親しげな態度だ。
「まあ、わざわざ外に出なくたって、白鮫(うち)の子の中にもあんたなら相手になってやってもいいって子がいるかもねえ」
 寧波は品定めの目つきで直江を見ながら、そう言った。
 "相手になってやる"だなんて、まるで決闘か何かのようだ。
 直江が興味がないとばかりに肩をすくめると、
「ふうん」
 今度は直江の顔を覗き込んできた。
「よっぽどウデに自信がないのか、それとも」
 その顔に、笑みが浮かぶ。
「おなごに興味がないのか」
「……何が言いたい」
 腕組みする寧波を、直江は見遣った。
「隼人といい、あのぼうやがそんなにいいかい」
───……」
 何の話だ、ととぼけてみても通じないだろう。
 清正と対面した際の抱擁のことは、きっと寧波の耳にも入っているだろうから、誤魔化しようがない。
 微笑って、目を伏せた。
 そんな直江に、
「一度、うちの子と試してみたらいい」
 寧波はからかうように言った。
「おなごの良さを思い知るだろうよ。何なら」
 寧波の顔がぐいっと近寄ってくる。
「私と一度、手合わせするかい」
 思わず、長い睫毛の瞳を見つめ返した。
 もちろん、手合わせとは組み手とか漕艇の腕を競うといったものとは違う。
 寧波は強靭な筋肉と健康的に焼けた肌の持ち主ではあったが、その身体のラインは魅力的な女性そのものだ。
 男なら誰でも、例えそれが冗談だとわかっていたって、きっと首を縦に振ってしまうだろう。
 しかし。
「負け戦をするつもりはない」
 直江は、多少気を使って答えた。
───……」
 しばらく目を丸くしていた寧波は、
「うまいねえ」
 そう言って、高らかな笑い声とともに去っていった。
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