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(午後二時……不開門……)
 今日は時間が経つのが遅い。
 頬杖をついた高耶がぼけーっとしていると、飛んできたチョークがスコーンとおでこに命中した。
───っ痛」
「恋かね、仰木君」
 チョークを投げた主は、休みの教師の代わりに再び教壇に立っている千秋だ。
「先程からため息ばかりだねぇ」
 こんなにいきいきとしている千秋は見たことがない
「ちゃんと聞いてて貰わなきゃ困るなぁ。テストでるよぉ、ここはぁ」
「………はい」
 小さな声で返事をすると、千秋は満足げに教壇へと戻っていった。
 再び高耶も思考が戻っていく。
 開崎は、江の島で会った時とは少し雰囲気が違っているように思えた。
 雪の日の朝の、あの無音の世界に似ていると思った。
 あの景色を見ていると、世界の終わりと始まりを目撃しているような気になってくる。
 感動を覚える傍ら、真摯な気持ちにもなるのだ。
 自分の存在や在り方を問われているような……。
「おうぎっ!」
 掛け声とともに再び飛んできた雪と同じ色のチョークを、今度は手のひらで受け止めた。
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