「残念でしたね」
夜、本部からの伝令だとか言って、無理やり作戦地までやってきた直江は、外で独り佇んでいた高耶の背中に声をかけた。
「直江」
振り返った高耶は、少々ふくれっつらだ。
「あんなに焦がすとは思わなかった」
高耶は昼間、潮との飯ごう炊さん対決で、見事な負けを喫していた。
いま直江は、潮からその話を散々聞かされてきたところだ。
赤鯨衆に来る前の高耶は野外で自炊していたと聞いていたけれど、すでにその頃の勘は鈍ってしまっているらしい。
「あなたは固めのほうが好きだから、水を少なくしすぎたんでしょう」
そう言うと、
「……おまえが柔らかくしすぎるんだ」
と返された。
そういえば昔、"これじゃあ米を食べている気がしない"とまで言われたことを思い出した。
もちろん白米など口に出来なかった時代もあったのだが、食材が芋だろうが豆だろうが、よく煮込みすぎだと怒られたものだ。
その頃の回想に浸っていると、
「おまえ、飯ごうでメシ炊けるよな」
高耶も考え事の顔で言ってきた。
「ええまあ」
しばらくやっていないけれど、やってできないことはないだろう。
「なら明日、おまえが武藤と勝負しろ」
え、と直江は思わず反論顔になった。
ただでさえ強硬手段でここへやってきてしまったから、この後すぐ宿毛に戻る予定なっているのだ。
「命令だ」
高耶は意思を曲げようとしない。
いつもは高耶のほうから帰れと言い出すのに、何だか珍しい。
「オレの仇を討って来い」
そう言い残して、高耶は去っていく。
「……御意」
直江は笑いながら、満天の星空をみあげた。
夜、本部からの伝令だとか言って、無理やり作戦地までやってきた直江は、外で独り佇んでいた高耶の背中に声をかけた。
「直江」
振り返った高耶は、少々ふくれっつらだ。
「あんなに焦がすとは思わなかった」
高耶は昼間、潮との飯ごう炊さん対決で、見事な負けを喫していた。
いま直江は、潮からその話を散々聞かされてきたところだ。
赤鯨衆に来る前の高耶は野外で自炊していたと聞いていたけれど、すでにその頃の勘は鈍ってしまっているらしい。
「あなたは固めのほうが好きだから、水を少なくしすぎたんでしょう」
そう言うと、
「……おまえが柔らかくしすぎるんだ」
と返された。
そういえば昔、"これじゃあ米を食べている気がしない"とまで言われたことを思い出した。
もちろん白米など口に出来なかった時代もあったのだが、食材が芋だろうが豆だろうが、よく煮込みすぎだと怒られたものだ。
その頃の回想に浸っていると、
「おまえ、飯ごうでメシ炊けるよな」
高耶も考え事の顔で言ってきた。
「ええまあ」
しばらくやっていないけれど、やってできないことはないだろう。
「なら明日、おまえが武藤と勝負しろ」
え、と直江は思わず反論顔になった。
ただでさえ強硬手段でここへやってきてしまったから、この後すぐ宿毛に戻る予定なっているのだ。
「命令だ」
高耶は意思を曲げようとしない。
いつもは高耶のほうから帰れと言い出すのに、何だか珍しい。
「オレの仇を討って来い」
そう言い残して、高耶は去っていく。
「……御意」
直江は笑いながら、満天の星空をみあげた。
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