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『 二日酔い 』≪≪    ≫≫『 9月12日 』   
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 9月25日。
「高耶さん」
 改札口を出るとすぐ、直江の声がした。
 電話ではしょっちゅう話していたけれど、顔を見るのは約二週間振り。
 まっすぐにこちらを見てくる直江の視線が照れくさい。
「よう」
 挨拶の声も、何だかぎこちなくなってしまう。
 が、直江の方はいつもと変わらない声で、
「行きましょう」
 高耶を促すと、歩きだした。
「忙しかったのか」
「ええ、とっても。あなたを呼び寄せて、手伝ってもらおうかと思いました」
「今時の坊さんの所作なんて、わかんねーぜ、オレ」
 しかしあまりに人手が足りない為に、橘家では長兄を駆り出そうという話し合いまで持たれたらしい。
「経を詠むのは何十年振りとかいうもので、さすがに断念しましたが」
 まあ、不動産一筋人間の唱えるお経では、ご先祖様の霊魂も鎮まりようがないかもしれない。
 苦笑いを浮かべる直江の横顔を、高耶は笑って見つめた。
「こっちです」
 広い駐車場に片隅に停まるグリーンの車の扉を直江が開けて、高耶はいつもの通り助手席へと座る。
 そして運転席側に回り込んだ直江は乗り込むなり、
「高耶さん」
 待ちきれないといった様子で、高耶の腕を引いて抱き寄せた。
「………人に見られる」
「構わない」
 直江は高耶を抱く腕に更に力を込める。
───……」
 高耶も手を、直江の背中へとまわした。
 ………何と言ったらいいのだろう。
 心にあいていた穴が埋められていく感じ?ずっと不自由だった身体の部分がやっと元に戻った感じ?完全ではなかったものが、完全になったという満足感と充足感と快感。幸福感。
 高耶がそんな感覚を抱いていると、
「………生き返る心地がします」
 直江は静かに、そう呟いた。
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