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『 千秋の受難 01 』≪≪    ≫≫『 帰宅 』   
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 鍵は何度も何度も何度も取り上げたのに、高坂は必ず合鍵を持ってやってくる。
 錠前ごと変えてみたり、合鍵の作れない特殊な鍵にしてみても効果はなかった。
 いざとなれば《力》を使って開けられるはずなのに、わざわざ合鍵を使って入ってくるところが憎たらしい。
「今週末もくるんだろう?景虎殿は」
 早朝、テレビに向かってすっかりくつろいでいる高坂は、ザッピングをしながら聞いてくる。
 直江は高坂はいないものとして扱っているから、コーヒー片手に朝刊に眼を通しながら返事もしない。
 こんな高坂でも気を使ってなのかなんなのか、高耶の来る週末だけは絶対にやって来ないのだ。
 だからまあ、かろうじて、ギリギリのラインで、許してやっているのだが。
「バレンタインというやつだな、14日は」
 いやな予感がして、思わず喋ってしまった。
「………来るなよ」
「当たり前だ。私とて景虎殿の恨みは買いたくない」
 高坂は大仰に頷いてみせる。
 ならすすんで恨みを売るような真似をしてくる自分のことは、いったい何だと思っているのだろう。
 つくづく人を馬鹿にしてる、と、直江は苦虫を噛み潰したような表情でコーヒーをすすった。
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