「あれ、フェラーリじゃない?」
「えええ?なんでこんなとこに?」
HRが終わってもすぐに教室を出る必要のない帰宅部の生徒数名が、窓に張り付いて口々に何かを言っている。
千秋はなんとなーく嫌な予感がして一緒になって窓辺へ立った。
すると校門のところに、異様に派手な車が停まっている。
やっぱりそうだ。
「あのバカ……。やることが極端すぎんだよ」
振り返って、授業中からずっと机に突っ伏して眠ったままの高耶の耳元で怒鳴った。
「おーぎくんっ!」
「………あ?」
「お迎えがきてんぞ」
「………は?おむかえ?」
「いいから見てみろよ」
千秋に言われるがまま外を覗いた高耶は、
「げえええええええっ!」
と奇声をあげた。
「直江!」
「高耶さん。お疲れさまです」
のんきに挨拶をしてくる直江を、
「いいから、さっさと行くぞっ」
と急かして車に乗りこんだ。
橘家のセカンドカー、フェラーリ・テスタロッサだ。
確かにベンツもアレだったが、これではもっとアレだ。
さっさと発進しろと命じながら、高耶は悲鳴をあげた。
「ったく、おまえはオレをどうしたんだよっ!」
「たまには、いいでしょう?」
よくない、と怒鳴りたかったが、事情を千秋に聞いたから怒ることも出来ない。
高耶が周囲に受けている誤解を、わざわざ解きにきてくれたのだ。
「いつも同じでは、飽きてしまいますし」
そういう直江自身も、いつもの印象とはだいぶ違う。
ダーク系のスーツではあるのだが、カラーシャツにタイはしておらず、いつものかっちりとした格好ではなかった。
(けど………)
いつもの白シャツなら葬儀屋かヤクザ者で決まりだったのだが、これではますます正体不明になってしまっている。
青年実業家というほどがっついた感じはなく、水商売人にしては爽やか過ぎる。
もちろん学生には見えないし、サラリーマンにだってみえない。
「………なあ、今度は坊主の格好してこいよ」
と言うと、
「袈裟懸けでフェラーリ、ですか……?」
とぼけ顔で言われた光景を想像してみて、高耶は笑える、と爆笑を始めた。
直江はそんな様子を、微笑ましいとばかりに見守っている。
「昔のあなたは、そんな風に笑ったりはしなかった」
「………だからなんだよ」
「ずっと、笑っていて欲しいんですよ」
直江は静かに言う。
「あなたの感情に触れるのはとても心地がいい」
高耶は何て返事をしていいのか、とまどってしまった。
そんな様子に気付いた直江は、
「感情を、溜め込まないで欲しいと言いたかったんです。私でよければいくらでも相手になりますから」
取り繕うように笑って言う。
だから高耶は、
「溜め込めるようにできてたら、ヤンキーなんてやってねーよ」
と、笑い返した。
「えええ?なんでこんなとこに?」
HRが終わってもすぐに教室を出る必要のない帰宅部の生徒数名が、窓に張り付いて口々に何かを言っている。
千秋はなんとなーく嫌な予感がして一緒になって窓辺へ立った。
すると校門のところに、異様に派手な車が停まっている。
やっぱりそうだ。
「あのバカ……。やることが極端すぎんだよ」
振り返って、授業中からずっと机に突っ伏して眠ったままの高耶の耳元で怒鳴った。
「おーぎくんっ!」
「………あ?」
「お迎えがきてんぞ」
「………は?おむかえ?」
「いいから見てみろよ」
千秋に言われるがまま外を覗いた高耶は、
「げえええええええっ!」
と奇声をあげた。
「直江!」
「高耶さん。お疲れさまです」
のんきに挨拶をしてくる直江を、
「いいから、さっさと行くぞっ」
と急かして車に乗りこんだ。
橘家のセカンドカー、フェラーリ・テスタロッサだ。
確かにベンツもアレだったが、これではもっとアレだ。
さっさと発進しろと命じながら、高耶は悲鳴をあげた。
「ったく、おまえはオレをどうしたんだよっ!」
「たまには、いいでしょう?」
よくない、と怒鳴りたかったが、事情を千秋に聞いたから怒ることも出来ない。
高耶が周囲に受けている誤解を、わざわざ解きにきてくれたのだ。
「いつも同じでは、飽きてしまいますし」
そういう直江自身も、いつもの印象とはだいぶ違う。
ダーク系のスーツではあるのだが、カラーシャツにタイはしておらず、いつものかっちりとした格好ではなかった。
(けど………)
いつもの白シャツなら葬儀屋かヤクザ者で決まりだったのだが、これではますます正体不明になってしまっている。
青年実業家というほどがっついた感じはなく、水商売人にしては爽やか過ぎる。
もちろん学生には見えないし、サラリーマンにだってみえない。
「………なあ、今度は坊主の格好してこいよ」
と言うと、
「袈裟懸けでフェラーリ、ですか……?」
とぼけ顔で言われた光景を想像してみて、高耶は笑える、と爆笑を始めた。
直江はそんな様子を、微笑ましいとばかりに見守っている。
「昔のあなたは、そんな風に笑ったりはしなかった」
「………だからなんだよ」
「ずっと、笑っていて欲しいんですよ」
直江は静かに言う。
「あなたの感情に触れるのはとても心地がいい」
高耶は何て返事をしていいのか、とまどってしまった。
そんな様子に気付いた直江は、
「感情を、溜め込まないで欲しいと言いたかったんです。私でよければいくらでも相手になりますから」
取り繕うように笑って言う。
だから高耶は、
「溜め込めるようにできてたら、ヤンキーなんてやってねーよ」
と、笑い返した。
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