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『  』≪≪    ≫≫『 サンセット 』   
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「隊長!!」
 廊下で打ち合わせをしていると、厨房で働く隊士に呼び止められた。
 なんだか異様にテンションが高い。
「隊長は山芋はお好きですか!?」
「山芋?」
 あまりに唐突な質問で思わず聞き返す。
「ホラ、あの白くて粘っこい……」
「ああ、それはわかってる。別に嫌いじゃない」
「よかった!大量に差し入れがあったもんで、
 しばらく食堂のメニューは山芋づくしになりますきに!」
 何が楽しいんだか浮き足立ちながら去っていく隊士を目で見送った。
「なんだアイツ……」
 隣にいた直江がさらりと言う。
「隊長はお好きですよね。白くて粘り気のあるモノ」
「……橘」
 赤鯨衆に長くいて、野郎の下ネタ好きには理解があるつもりだったが、
この男は誰かがそんなことを言えば白い目でみるようなタイプのくせに。
 高耶が相手だとまるっきり違うらしい。
「調子に乗るな」
 視線をキツくして言うと、
「あなたこそ調子に乗ると、今晩酷いことになりますよ」
と、逆に顎を掴まれた。
「く……っ……」
 声を意識的に低くしたのは、そうすれば高耶の官能を刺激できると知っているから。
 案の定、高耶は直江の罠にハマりかけている。
 いつ人が通りかかってもおかしくない状況というのも悪い。
「……今日の夜は嶺次郎に呼ばれてるから出掛ける」
 手を振り払いながら、ささやかな抵抗のつもりでありもしない予定を言うと、
少しは効いたようで黙り込んでしまった。
 おとなしくなってちょうどいい、しばらくそのままでいろと内心思って、
高耶は打ち合わせへと話を戻した。


□ 数 時 間 後 □

「嘘なんて吐いて。焦らすつもりだったんですか」
 高耶は自室で問い詰められていた。
 現金なものだ。
 嶺次郎に会いに行く予定などないとわかるとすぐにこれだ。
 本当にこの男はヤルことしか頭にないんじゃないかと思う時がある。
「調子に乗るなと言っただろう」
 構わずに部屋を出て行こうとすると、腕を掴まれ引き寄せられた。
 間近に顔が迫る。相変わらず色素の薄い、硝子のような瞳。
 想像以上に切羽詰った表情をしている。
「どうしても今夜、あなたが欲しい」
 熱く掠れた声で言われて、高耶の中の何かが弾け飛んだ。
「ん……っ……」
 気がつくと、自分から唇を重ねていた。
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