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『 パンツ 01 』≪≪    ≫≫『 さりげなく 』   
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 八十八ヶ所の寺社は観光地でもある。
 その中のひとつの寺の境内を、ツアー客の足元を縫うようにして歩く小さな男の子がいた。
「ママぁ~~っ!」
 どうやら迷子のようだ。心配になった周囲の大人たちが声をかけても、泣き叫ぶばかりで受け答えが出来ない。
「ぼうや、大丈夫かな?」
 膝を折り、顔の高さを一緒にして精一杯の社交スマイルを浮かべる直江に、男の子はやっと目を合わせた。
「お兄さんと一緒にお母さん探そうか」
 直江の言葉にこくんとうなずく。
 抱き上げた直江があたりを見回していると、直江の背の高さがよかったのか、じきに母親が半泣きでやってきた。
「まーくんっ!」
「ママぁ~」
 母子はひしと抱き合った。
「物騒な世の中ですから、ぼうやの手を離さないように」
 優しく諭すように直江が言うと、若い母親はハイッと頬を赤くし、お礼を言いながら慌しく去っていった。
 ツアー客らもよかったよかったと安堵の声をあげながら、散り散りになる。
 残された直江が後ろにいたはずの高耶を振り返ると、何故か真っ赤な顔で立っていた。
 "ぼうや"という言葉で何かを連想したに違いない。
「かわいい"ぼうや"でしたね」
 わざとらしく直江が言うと、高耶は動揺を隠すようにくるりと背を向けて言った。
「おまえ、そろそろ自分をお兄さん呼わばりすんの、考えたほうがいいんじゃないのか」
 ピクリと眉を上げた直江はいきなり高耶の背後から襲いかかった。
「なっ!なにするんだよっ!」
「……かわいいぼうやだ」
 直江が遠慮なしに"ぼうや"を鷲掴みにするから、高耶は悲鳴をあげた。
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