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『 横浜 06 』≪≪    ≫≫『 横浜 04 』   
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 男に対して高耶が何かを言った。
 しかし男は首を横に振り返すのみだ。
 高耶はあきらめずに何度か話しかけるのだが、男は頑なな様子だ。
 じきに、高耶は少し離れた場所で見守っていた直江のところへと戻ってきた。
「あいつを身体に戻してやる方法はないのか」
「無くはなくはないですが……戻ったとしても、いずれまた自殺するかもしれませんよ」
 直江がそう言うと、
「あいつもそう言ってる。でも、放っておくわけにはいかないだろう」
「……………」
「おまえは、放っておいたほうがいいって思ってるのか」
 高耶が、睨み付ける様にして直江を見てきた。
 その力強い視線を、直江はじっと受け止めた。
「どうするかを決めるのは私じゃありません。あなたですよ、景虎様」
「…………」
 しばらく直江を睨んでいた高耶だったが、不意に踵を返すともう一度男のところへと歩いて行って、何かを一言話しかけた。すると先ほどとは違い、男の方が何かを高耶へ語りだした。高耶は相槌を打ちながら話を聞いてやっている。
 周りの人間には男の霊体が見えないから、宙に向かって頷いている高耶に気付いた何人かの人々が、奇異の眼で通り過ぎて行った。
 そんなことは気付きもしない高耶は、しばらくして厳しい表情を崩さぬまま戻ってきた。
「やっぱり、あいつはまだ死ぬべきじゃない」
「いいんですか」
「直江、これは命令だ」
 眼に、虎の力を宿して高耶は言う。
「あいつを身体に戻してやって欲しい」
 そこまで言われて、直江の中に逆らう理由はなかった。
「御意」
 頷いた後、口の中で短い真言を唱え、素早く印を結ぶ。
 すると。
「!」
 男の霊体から水蒸気のようなものが立ち上がり、一瞬パッと光った後でかき消えた。
「これで身体に戻ったはずです」
 さっきまで霊が立っていた場所を見つめている高耶に直江が言うと、
「………さんきゅ」
 半信半疑の声で、応えが返ってくる。
 すると、
「おーい!意識が戻ったらしいぞ!!」
 二人の背後から、そんな野次馬の声が聞こえてきた。
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