「そうか。そんなことを……」
「もう少しここで過ごしていたら、入隊していた可能性もありましたね」
「早まったと言いたいのか」
「いいえ。少なくとも、ひとりの憑坐が救われました」
ベッドに横たわり、直江の腕に身体を預けて首を傾げていた高耶は、やがて口を開いた。
「この世に残るのに、憑坐が必要なかったら?」
「───もちろん、霊体でも残れますが……。それがどういうことか、あなたも知っているでしょう?」
「そうじゃなくて。もし霊体でも、身体があるように振舞えたら?」
《力》が強い霊などは、宿体がなくても変わりなく振舞えることもある。
「どうでしょう……。ただ、霊体では飲食もできなければ、眠ることもありません」
直江は、それに、と付け足した。
「愛するひとに触れることもできない」
直江は、高耶を抱く腕に力を込めた。
「いずれ、宿体が欲しくなるでしょうね」
「そうかもな」
直江の腕の、心地の良い圧迫感に身を任せながら、だけど……と高耶は考える。
肉体の求めるものは満たしてやれなくても、心の欲求だけは汲み取ってやりたい。
無理やり浄化させるのではなく、きちんと納得してこの世を旅立っていって欲しい。
それだけであれば、肉体がなくとも出来るはずだ。
自分はこの身体を手放せないのに、そう思うのはずるいだろうか。
自分が出来ないことを人に求めるのは、罪深いことなのだろうか。
「オレは………おまえに触れられなくなったら、きっと気が狂う」
「高耶さん」
直江が首筋に顔を摺り寄せてきて、
「───……」
高耶はゆっくりと目を閉じた。
「もう少しここで過ごしていたら、入隊していた可能性もありましたね」
「早まったと言いたいのか」
「いいえ。少なくとも、ひとりの憑坐が救われました」
ベッドに横たわり、直江の腕に身体を預けて首を傾げていた高耶は、やがて口を開いた。
「この世に残るのに、憑坐が必要なかったら?」
「───もちろん、霊体でも残れますが……。それがどういうことか、あなたも知っているでしょう?」
「そうじゃなくて。もし霊体でも、身体があるように振舞えたら?」
《力》が強い霊などは、宿体がなくても変わりなく振舞えることもある。
「どうでしょう……。ただ、霊体では飲食もできなければ、眠ることもありません」
直江は、それに、と付け足した。
「愛するひとに触れることもできない」
直江は、高耶を抱く腕に力を込めた。
「いずれ、宿体が欲しくなるでしょうね」
「そうかもな」
直江の腕の、心地の良い圧迫感に身を任せながら、だけど……と高耶は考える。
肉体の求めるものは満たしてやれなくても、心の欲求だけは汲み取ってやりたい。
無理やり浄化させるのではなく、きちんと納得してこの世を旅立っていって欲しい。
それだけであれば、肉体がなくとも出来るはずだ。
自分はこの身体を手放せないのに、そう思うのはずるいだろうか。
自分が出来ないことを人に求めるのは、罪深いことなのだろうか。
「オレは………おまえに触れられなくなったら、きっと気が狂う」
「高耶さん」
直江が首筋に顔を摺り寄せてきて、
「───……」
高耶はゆっくりと目を閉じた。
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