忍者ブログ


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。








『 車内 』≪≪    ≫≫『 不開門へ 』   
おまけIndex


「隊長?」
 ついさっきまで、バリバリと山積みの書類を片付けていた高耶が、気がつくと窓の外をぼんやりと眺めている。
「屋上に行く」
「はい?」
 突如ダッシュで部屋を後にした高耶を追って、大急ぎで階段を駆け上がり、屋上へ出てみると。
─────
 沈みかけた太陽が、空を真っ赤に染めていた。
 その色は炎が燃え立つようで、胸に迫るものがある。
 高耶の傍らに並んで立った直江の心の内で、いつかの光景が想い返された。
「昔、やはり日没をみて感動したことがありました」
 まだあの日から、数年しか経っていないことが、、信じられない思いだった。
「まるで、あなたを想う気持ちのようだと」
 あの時は、心の底からそう思ったのだ。
 しかし、高耶からの返事はなかった。
 その横顔は、眼の前の景色を必死に心に刻み込もうとしているように見える。
 だから直江も、その赤い色を脳裏へと焼き付けた。
 やがて、太陽が半分以上も山の後ろに隠れた頃になって、
「認識を改めろ」
 くるりと踵を返して、高耶は屋上の扉へと歩き始めた。
 おこがましいと怒られるのかと思ったら、
「おまえのは、こんなんじゃきかない」
 真逆の答えが返ってきた。
「………景虎様」
 背後で、扉の閉まる音がする。
 続いて階段を駆け下りていく靴音がした。
 すでに太陽は、完全に山向こうに隠れてしまっている。
 直江も苦笑いで、暗さの増した屋上を後にした。
PR







『 車内 』≪≪    ≫≫『 不開門へ 』   
おまけIndex

 月別 一覧

        










 忍者ブログ [PR]